神戸大学卒業。岡山大学大学院で幅広く公衆衛生を学んだ後、兵庫県立大学地域ケア開発研究所(災害と健康危機管理に関するWHO看護協力センター)研究員、近大姫路大学講師・准教授として教育に携わる。
「グローバル」・「災害」をキーワードに仕事を行い、特にインドネシア、タイ、スリランカなど東南アジアを得意とする。
平成24年度より高知県立大学に赴任し、災害看護グローバルリーディング養成プログラムにて、改めて「災害」×「人間の安全保障」に向き合う。

災害現場で見た避難生活の実態を教えて下さい

災害がひとたび起きると、安定した、安寧な生活や、安心のような生活が一気に崩れて日々状況が変わっていきます。体育館が避難所になることが多いですが、お家に住んでいる状況と全く違うような中で生活再建の間をしのぐのが避難生活です。

避難所の健康リスクを教えて下さい

総じて言えるのは、災害時要支援者、要配慮者 と言われている人たちのニーズがバラバラなこと。個別のニーズがマニュアル化されていないと、要支援者・要配慮者に何が必要なのか気づかれないことが多いです。
例えばアレルギーを考慮したお弁当がないだとか、オムツが足りない。乳幼児にオムツが無いのは、トイレがないのと同じです。要介護者や高齢者の方では、避難所がバリアフリーでなかったり、多目的トイレの数が足らない。他にも妊婦さんへの配慮や、お子さん連れの方が授乳をする場所がないなど、日頃だったら家の中で普通にできていたことが、避難所では難しくなるのです。
※1 乳幼児、子どものいる家族、妊婦、高齢者、要介護者、ペットを飼われている家族など

災害現場・避難所の実態
災害時のライフラインについて教えて下さい

自分たちがどれだけ電気に頼った生活をしているかを踏まえて、住まいは検討しなければいけません。停電への備えはもちろんあった方が良いと思います。
災害時、一番最初に避難所に持って行くのがスマホの充電器。今はスマホへの依存が強いのでそれがないと安否確認もできないし、命に関わるくらい情報の量が変わってきます。
また、水害時に多いのが断水。猛暑が続く夏の断水は命に関わります。
生活用水も重要で、それがないと洗濯ができなかったり、トイレも流れなかったりと、衛生を保つことができません。片付けもなかなか進まないので生活再建に時間がかかります。
断水への備えについては、ペットボトルで置いておくと場所を取って大変ですし、賞味期限の管理も必要です。フェーズフリーという言葉が使われていますが、平時に自然と使いながら溜めておけるのが一番理想的な備えだと思います。

災害現場・避難所の実態
災害時の医療体制について教えて下さい

地域のかかりつけ医が被災すると、いつものお薬を貰えなかったり、病気を未治療のままにしてしまうことが多くなります。
私が見た中では、退院して一週間も経たずに被災して、体育館に避難した方が急激に体調を悪くしました。その後亡くなったと聞いています。治療中、または退院したての方の避難は災害関連死の危険もあるのです。

複合災害のリスクと備える意識とは?

水害が多発したり、台風が激甚化して、何百年に一度だとか滅多に起きないことが起こっています。もう、災害は起こるものだという意識が重要です。
阪神大震災の後に、地震対策をすごくしました。東日本大震災が起きた後には津波対策を始めました。コロナに対しては、まだ過去の記憶を活かした対策ができていません。どんな災害がいつ起こるかわからないわけですから、今の安心の生活を強化しておくべきだと思います。